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四つ葉のクローバー

「いっぺん 泣いて」教室の隅にわざわざ呼ぶから何かと思ったら 手を合わせて智樹は言った。小学校六年間、組がえでほとんどの子が一度は同じクラスになる。紗季と智樹は 結構縁があるのか何回も同じクラスになっている。「泣き顔見たたことない女子って、お前だけなんだよなぁ」* 女の子に限らず 六年の間にみんなよく泣いた。転んで泣く、出来なくて泣く 失

泣き女(前編)+夏の終わり・最後の蝉(後編)

祖母の葬式に来た婆さんは 棺に近づくと祖母の名前を呼びながら膝をつき、おんおん泣いた。 親類もすでにいない過疎の島のとんでもないへき地の一軒家でひっそりと祖母は暮らしていた。転んで倒れたところを 幸いにも通りかかった郵便配達員が見つけたとかで、遠く離れて住む僕の母に連絡があったのだ。 独りでは置いておけないのでやむなく呼び寄せることにし

此岸の蜉蝣

──池の向こう側が彼岸──ひがん?──そう、「あの世」深く暗い森のような庭の隅にその池はあった。花の時期を外れた蓮池は、水面とそこから突き出す葉ばかりでひっそりとしている。彼女が指さした「彼岸」側の木々の隙間から見える空は、ほんの僅かの間に夕焼けの色を広げている。茜色に染まった世界は引き込まれるように美しかった。**「おさだかなこ

温かな向かいの席

もう死のうかな……なんて思っているのに、お腹が減るのが情けない。 結婚する気満々で仕事も辞めてしまったのに、他の女に相手を取られてしまった。「このまま結婚しても、君を傷つける、一旦 白紙に戻して考えよう」 奇麗事並べんじゃないよ。ただの心変わりじゃない。 寒さに負けて何となく立ち寄ったのはゲームセンターだった。ゲームの音にBGMが被りや

たすけ舟の家

その家は「こども一一〇番の家」だった。子供が身を護る時に、頼っていいという「助け舟」になる家だ。小学校の行きかえり、そのプレートと「大須賀」という表札の並んだ玄関を見るたびに、私は少し立ち止まり、駆け込む自分を想像した。そこには優しいあの人が居て、「どうしたの?大丈夫?」と話を聞いてくれる。私が落ち着くのを待って、温かな飲み物を差