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屋根の上から見えるのは

その時、私は屋上に立って、校舎の影でいつも薄暗いグラウンドの隅っこ辺りを見ていた。初夏の風が制服のスカーフをかすかに揺らす。きっぱりと青い気持ちの良い空が、頭の上広がっていたはずだけれど、 気持ちはどんより曇っていた。 鼻先をかすめ、風に乗ってふわふわと舞う和毛(にこげ)を見たような気がして思わず目で追う。その時のこと。くねりながら続

マトリョーシカのくすり箱

苦しい時は 水色のおくすり。さあ、落ち着いた。勇気が出るように 赤いおくすり。お顔を上げて 胸張って。寂しいときは黄色のおくすり。ほら、もう、笑っている。 * 学校の帰り道の脇に、小さな庭のあるおんぼろな木造の平屋がある。植え込みや軒下には猫が何匹も我が物顔で出入りし、年寄の犬が今やっと目が覚めたような顔をして窓から時折顔を覗かせる。 日南

いつかの日の冒険日記

「そう、確かに危険はない」謙行さんは窓の外に目をやったままで祐希に言った。祐希が最近買ったロールプレイングゲームの話をした時だ。「怪我したり死にそうな目に会う心配もないし なによりお前が帰って来るまで ばあさんが青ざめて待つことも無いわけだ」非難するとか否定するとかそんな言い方ではない。今どきのこどもたちが夢中になる遊びを馬鹿にしたり

絵を描く人になりたかった4

1.うちのねこのはなし ほとんど 鳴かない 猫だった。 ずっと そんなものだろうと 思っていた。 小さな毛玉だった頃から 3年経て やっと 「ご飯?」 「ご飯 欲しいの?」 何度も聞いて じらすと 「なぉーん」 短く やっと 声を出す。 トイレ 終わったよ・・と やはり 短く 「みゃあ」と鳴く。 聞こえても 聞こえなくても 応えてやっても やらなくても。 それにしても

さかなの目 (さかなの目1)

どろりと緑色に濁った水の中 片方の金魚が腹を上にしてゆらゆら揺れている。 死んでる?一瞬背中がザワっとしたが、よく見たら口がぱくりぱくり動いている。ああ……生きてた。水槽の隣に目をやると小さな籐のカゴ。千波が小学生の時父の日にプレゼントしたやつだ。──会社に行くときに必要なものを入れたらいいよ、ここだったら絶対忘れないでしょだけど、今